<ライフアップ通信より抜粋>
家族信託のすすめ 「信託」のイメージについて
2007年9月の信託法の改正により、新たに民事信託なるものが追加されました。いわゆる家族信託です。誤解を恐れずに申し上げますと、「家族信託は、任意後見・成年後見等にみられる、従来の財産管理制度の硬直性(デメリット)に対する補完システムとして大いに期待されるものです。」
現在、「家族信託」は、福祉型信託として活用されるケースが一般的です。福祉型信託は、高齢者や障害を持ったご家族を対象にした信託で、“柔軟な設計が可能な財産管理上のシステム”とイメージしていただきたいと思います。この制度の活用により、信頼できる親族間の(財産の継承や将来の認知症リスクのヘッジとして)比較的長期(数世代)にわたる財産継承のシステムが可能となりました。これにより、ご自身の亡きあと、配偶者や障害を持つ子供の生活を経済的に支える糧となる仕組みとなります。
今回は、少し皆さんに信託という言葉のイメージを摑んでいただきたいと思います。
現在、我が国で 最も家族信託に精通されている遠藤英嗣弁護士の言葉をお借りすれば「信託とは、対象となる財産が宙に浮いたような存在」ということになります。これは、信託財産は、すでに本人(委託者)の手から離れてしまっているので、信託契約後、本人又は受託者にいかなる事情が発生しても、その信託財産は、守られることを意味します。その信託財産は、目的に沿ってのみ使用されることとなります。従って、仮に、本人が病気により判断能力をなくしても、信託財産の受託者は、目的(受益者)のために当該財産を管理運用処分できることとなります。また、本人か信託財産の受託者が多額の負債を抱え破産した場合でも、信託契約により、当該財産は守られ、契約上の目的のためにのみ使用されるというものです(倒産隔離機能)。これは本当に“安心安全なシステム”ですね。このような信託機能を利用することで、多種多様なケースに柔軟に対応できるのが家族信託です。
先のライフアップ通信3月号で掲載いたしました「家族信託のすすめ」の中でご紹介しました事例は、この信託機能を利用したもので、主に認知症対策のものといえます。父親の自宅不動産を息子が受託、そして、運用管理を受益者である父親のためにし、父親の死後に息子に相続させるというシンプルなもので、その間に父親が認知症等にかかり、判断能力を失ってもスムーズな対応が可能というものでした。さらにこの事例を発展させて(数次相続対策として)、父親の死亡後に受益者を母親に移行させ、母親の死後に息子に相続させることも可能です。
如何でしょうか。「家族信託」へのイメージが少しは、湧いてきましたでしょうか。家族間の問題で大変、役に立ちそうなスキームとなり得るものですので、今後、是非活用していただければと思います。この家族信託につきましては、次回以降も、ライフアップ通信にて、さらなる発信をしてまいりたいと思います。
以上